「住宅ローン低金利の今が買いどき!」
ついつい、その気になる文句です。たしかに同じ住宅ローン3000万円を返済期間30年で借りるにしても、金利2%なら月々11万886円の支払いですが、もし5%に上がったら(ありえませんが)16万1046円と、なんと5万円以上もアップします。総支払額では2%のときに3991万8903円であるのに対し、5%では5797万6735円と、じつに1800万円以上もの差。
どう見ても低金利の方がお得に思えます。
しかし、じつはこれはあくまで物事の一面を見たときの心理であることに注意が必要です。
もう一方の面から見れば、まったく逆のことがいえます。
金利の上昇は資産価値下落の方向に動く
資産価値、つまり不動産の価値は「次に買う人がいくらで買ってくれるのか」で決まります。もし金利が5%になったら、私達の収入が大幅アップでもしない限り、次にあなたの住宅を買ってくれる人の購入能力は下がってしまいます。
同じ11万886円の支払いで2%のときには3000万円借りられても、5%では2050万円しか借りられません。
つまり基本的に、不動産売価を950万円下げなければ、あなたの住宅は売れにくい、ということなのです。
金利上昇が不動産価格下落圧力となることは、不動産業界の常識です。
REIT(不動産投資信託)の商品価格が、金利上昇局面で下落するのはそのためなのです。
毎月のローン支払いや家賃などは、会計学でいう「フロー(支払い)」の視点。
不動産では、もう一方の「ストック(資産価値)」の視点まで合わせて考える必要があるのです。
低金利=支払額、資産価値の両方が下がると覚えよう
低金利とは、自身や家族にとって変える条件が揃い、また望む物件が見つかったそのとき、たまたま低金利だったらラッキーという程度にとらえておけばいいのです。
低金利で得だから今のうちに、というのは一面的な論理であることを肝に銘じておきましょう。
同様に、所得税の還付を受けられる「住宅ローン控除」などの税制優遇や、かつて行われた住宅エコポイントなどの特典も同様です。
自分が買うときにこれらのメリットを満喫できても、次に買う人が使えなければ結局、資産価値としてはその分マイナスで手放すことになるというメカニズムを知っておいてください。